≪準決勝≫ 対 東大医 (2017.12.02 東大駒場G)

  1 2 3 4 5 6 7 H E
名大医 0 1 2 2 0 2 3 10 11 6
東大医 1 0 6 2 4 0 4x 17 12 7

名大医:左合(5)、溝口(1 1/3)、-宮島(5)、伊藤(1 1/3)

東大医:鳥海(3 1/3)、佐々木(3 2/3)-杉本

 

一塁打:梅村、近藤、岩瀬、加藤、金谷、宮島2、伊藤

二塁打:東郷

三塁打:

本塁打:加藤、岩瀬

 江戸城は西、麹町。そこには多くの大名屋敷や、江戸幕府の重鎮の屋敷が立ち並ぶ。その一角に建つ大目付役、池田政倫の屋敷、そこが果し合いの場となった。

 

 果し合いには、象のアベやケンさんなどやきう仲間は勿論だが、あの剣豪武蔵と幕府の侍の戦いを一目見ようと、剣には一言も二言もあるような輩が大勢集まり、なんと池田政倫も自ら立ち合うこととなった。しかも、もっぱらの実力主義の池田氏はこの果し合いに武蔵が勝てば、武蔵を自分の側近として登用するとまで言い出した。このようなことは普通では考えられないが、女癖の悪い梅太郎のせいで、それを部下とする自分の評判まで落とされないようにしようと考えたのだろうか。

 

 

 

「始めぃっ!」「ドンッ!」

 

太鼓の音ともに戦いが始まった。武蔵は剣を抜かずに、居合の構え、一方の梅太郎は上段の構え、両者間合いをとったまま一歩も動かない、だが二人の間で殺気と殺気がぶつかっているのは確かに見て取れた。

 

「どっちから仕掛ける?」「武蔵じゃねえか、あいつはたまらず切りかかるにちげえねえ」

 

と、野次馬の侍たち。

 

(破落戸相手には自分から斬りかかれば仕留められるが、今回ばかりは単純な力勝負では勝てそうもない、良くて互角だ。相手が斬りこんで来たところに、居合の一太刀だ。この一発で決めるしかない、、、)武蔵にそう感じさせるほど、梅太郎からは強者のオーラがあふれていた。

 

「チュン、チュン。」

 

その時、木の上の一羽の雀が鳴いた。そして、武蔵がそれに気を取られ一瞬集中が切れたのを梅太郎は見逃さなかった。電光石火の斬り込み、狙いは首。しかし、武蔵も居合でそれを返そうとするが、、、

 

「カキン!ブチュ!」

 

梅太郎の刀は、武蔵の刀が当たるも返されるまでには至らず、武蔵の左肩をえぐる。一方の武蔵の刀は梅太郎の刀にあたった後その先端は、梅太郎の左わき腹をとらえた。二人から鮮血が溢れるが、どちらの目も死んでいない。

 

 これで居合の一太刀の線はなくなった。もはや、力勝負しかない。

 

「行くぞ、武蔵!」

 

「望むところじゃ!」

 

「カキカキッ!カキン!カキン!ズバ!カキカキン!、、、、、」

 

二人の刀がぶつかる。時に、互いの肉を捉えるが、急所は外れる。その時、

 

「ブチュ!」

 

梅太郎の刀が止まった。武蔵が梅太郎の刀を握ったのだ。武蔵の左手からは夥しい量の血が溢れる。

 

「き、貴様、、、」

 

「お前が行くのは地獄じゃ、天国のお涼にはもう言いよれんぞ。御免!」

 

梅太郎の首が飛んだ。

 

 

 

エピローグ

 

 果し合いに勝った武蔵は、大目付の懐刀として取り立てられ、江戸の平和を守ったという。やきう軍団は武蔵の活躍で大江戸リーグも4部から3部に昇格を果たしたという。ただ、武蔵はお涼を亡くしてからは、死ぬまで妻を娶ることはなかったという。

 

 

 

これは徳川吉宗公の治世。皆生き、争っていた。善きも悪きも、美しきも醜きも、富める者も貧しき者も、今は同じ。

 

≪三位決定戦≫ 対 京大 (2017.12.03 東大駒場G)

  1 2 3 4 5 6 H E
名大医 1 2 1 3 0 0 7 11 1
京大医 0 0 0 0 0 6 6 7 4

名大医:萬徳(6)-宮島

京大医:影山(5)、末原(1)-橋本

 

一塁打:林、萬徳、宮島2、下田、山崎

二塁打:梅村、近藤、岩瀬、下田

三塁打:

本塁打:林

ユーサク(以下U)、タカシ(以下T)「はいどーも、ユーサクTVでーす。」

 

T「いやー、ユーサクさん。ホームラン見事でしたね」

 

U「まあね」

 

T「まあ、今回はね、しちゅうささん、、、、また噛んでしまいました。えー、  

 

視聴者さんからの質問にね。ユーサクさんに答えてもらおうということでやっていくんですけども。早速質問です。中学生の野球部員の方からですね。

 

Q『先日、監督に道具を大切にしろと言われました。なぜですか?』」

 

U「なるほどね。」

 

T「ユーサクさん、そういえば、グラブ忘れてましたよね」

 

U「まあ、まあ、まあ、まあ、たまにはね、、、」

 

T「すいません、話が逸れてしまいましたが、ユーサクさん。何で道具を大切にしないといけないんですかね?」

 

U「じゃあ、答えていきましょう。理由は3つあるんだけどね、まずね。お金出して買ったんだしね。消耗品だし、もったいないからね、、、」

 

T「まあ、そうですよね」

 

U「二つ目!部の道具とかだとね、自分だけのものじゃないからね。他の人も使うし、、、」

 

T「確かにね、ヘルメットの内側がベットベトだったら嫌ですしね」

 

U「三つ目はね、、」

 

T「、、、」

 

U「、、、」

 

T「どうしたんすか?ユーサクさん?」

 

U「いやあ、ちょっと言いにくいんだよね」

 

T「いやー、お願いしますよ」

 

U「地方の農村では女はみんな都市部へ行き、そこの男と結婚するせいで、慢性的な嫁不足がしんこくでした。例にもれず私も40を間近にして結婚のあてはありませんでした。私は農家の長男で、両親から毎日のように『結婚しろ、結婚しろ』と言われていました。結婚相談所の紹介で嫁さんをもらったのは、私が39歳、妻はまだ20歳になったばかりのときでした。

 

 彼女はカバン1つだけを持ってフィリピンからやってきましたが、近所からは好奇の目で見られ、あれほど結婚を求めていた両親でさえ、彼女を心から歓迎してはいませんでした。それでも私は彼女を愛していました。日本語が満足に話せなくても、料理にスパイスがききすぎていても、そんなことは問題ではありませんでした。彼女の笑顔が、私は好きでした。笑ってそばにいてくれれば、それだけでよかったんです。

 

実際彼女は、努力もしてくれていました。つたない日本語で一生懸命話し、料理の味付けを勉強し、小言の絶えない姑にも嫌な顔1つせず、日本の習慣や田舎のしきたりを身につけ、家や村になじもうと精一杯努力をしていました。

 

 しかし、彼女はなかなか受け入れられませんでした。姑の小言はやまず、近隣の者にはありもしない卑猥な噂をたてられました。姑は彼女が出歩くのを禁じるようになりました。掃除や洗濯など、家の中のことだけをやるように命じました。孫ができれば、姑の態度も変わったのかもしれませんが、なぜかその機会は訪れませんでした。

 

 やがて、私の愛したあの笑顔も、太陽のような笑顔も見られなくなりました。ついに私は離婚を切り出しました。もう、こんな家に縛られることは無いよ。君は自由に生きていい。結婚して1年がすぎたころでした。

 

『東京で彼女を見た』と聞いたとき、私は50になっていました。出稼ぎに行っていた男が彼女を見たというのは、錦糸町のフィリピンパブでした。迷いつつ私は東京へ向かいました。教わった店は、繁華街からはいくらか離れた細い路地の奥にありました。店の前まで行きながら、どんな顔をして会ったらいいのか、何を話したらいいのか、そもそも会っていいのか、いろいろ考えていると突然ドアが開きました。『アリガトゴザイマシタ、マタキテーネ』投げキッスをしてお客を送り出したのが彼女でした。

 

 ドアの前に立ちつくし、私に怪訝そうな目を向けた彼女の表情が、一瞬で驚きに変わりました。決して嬉しそうな顔ではありませんでした。しばらく2人とも言葉もなく見つめあっていました。私はしぼり出すように声を出しました。

 

『ひ、久しぶりだね』

 

『イラッシャイマセ、ドウゾ』狭い店内の1番奥のボックス席に案内され、向かいに彼女は座りました。

 

『ビール、ビールデヨカッタネ』

 

『あ、はい』かける言葉が見つかりませんでした。

 

やがて、ぽつりぽつりと彼女は話しはじめました。流暢な日本語でした。

 

『ワタシネ。アナタノコトウランデナイヨ、オカアサンノコトモウランデナイ。イロンナコトオソワッテ、ソレガトテモヤクニタッテル。アリガタカッタトオモッテルヨ。ダレモワルクナイ、タダチョット、カンキョウガ。ソウ、カンキョウガアッテナカッタ、ソレダケ』

 

うつむいて話していた彼女が顔をあげました。目元の化粧がにじんでいました。

 

『タシネ、イマイッショニクラシテルヒトガイルノ。トテモイイヒト。オカネハアマリナイカラワタシモハタラカナキャイケナインダケドモ、デモワタシヲタイセツニシテクレル。リョウリオイシイッテホメテクレル。オカアサンニカンシャシナキャネ』

 

『そう、、、うん、よかった』

 

『コドモモイルノ』

 

『え、男の子?女の子?』

 

『1バンウエガオトコノコデ8サイ、ソレカラオンナノコ、オンナノコ、オトコノコ、オンナノコデ5ニンキョウダイ。イマオナカノナニニモイルノ』

 

店を出た私を見送る彼女は、あの笑顔で笑っていました。これでよかった、彼女は幸せに暮らしている。

 

 田舎へ帰る高速バスの中、彼女の笑顔がまぶたを離れませんでした。

 

本当に彼女は、本当に彼女は幸せになれたんだろうか。

 

濃い化粧を見たか、きわどい衣装を見たか、荒れた肌を見たか、こけた頬を見たか、化粧で隠したあざを見たか、目つきの悪いボーイを見たか、下衆に笑う客どもを見たか、彼女の涙を私は見なかったのか。

 

彼女を守れなかった負い目のせいで、無意識に見たくないところから目をそらしてはなかったか。それが彼女の幸せだとか、虫のいいことを言って、責任を逃れただけじゃないのか。

 

道具も人と同じ、大切にしなければいけません。」